職場の環境改善や社員の賃金アップの必要性を感じていても、資金繰りの面からなかなか改善に乗り出せないでいる経営者の方も多いのではないでしょうか。補助金が出れば実現できるといった企業もあるかもしれません。そんな時にぜひ利用したいのが「業務改善助成金」制度です。
このコラムでは、業務改善助成金とはどのようなものなのか、その仕組みや要件についてお伝えします。
業務改善助成金とは?
業務改善助成金とは、中小企業や小規模事業者の生産性向上のための取り組みを支援し、事業所内の最低賃金を引き上げるための補助金制度です。
業務改善助成金には、<通常コース>と<特例コース>の2種類があります。<特例コース>はコロナ禍における助成を目的としたもので、感染拡大の状況などを受けて適用範囲や受付期間が変更されます。
一般的に利用されるのは<通常コース>ですので、ここでは主に<通常コース>の場合をご紹介します。
業務改善助成金<通常コース>
生産性向上を目的とした設備投資などを行い、実際に事業所内の最低賃金を一定額以上引き上げることで、取り組みのためにかかった費用の一部に補助金が出ます。対象となる設備投資などは「助成対象事業場において生産性向上に資するもの」である必要があります。例としては、設備機器の導入代やコンサルティング代、また人材育成のための教育訓練費などが対象となります。
業務改善助成金の対象要件
対象となるのは「中小企業・小規模事業者であること(事業場規模100人以下)」、「事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が30円以内であること」、「解雇、賃金引き下げなどの不交付事由がないこと」という要件を満たしている事業所です。
以上の要件を満たしたうえで、賃上げと設備投資などの計画をセットで立て、申請はそれぞれの事業場ごとに行ないます。
助成金の上限額
業務改善助成金には、最低賃金引き上げ額によって「30円」「45円」「60円」「90円」の4種類のコース区分があります。それぞれのコースで引き上げる労働者数(1人、2~3人、4~6人、7人以上、10人以上)によって助成上限額が変わります。例えば「30円コース」(事業場規模30人以上の事業者の場合)で、引き上げる労働者数1人なら30万円、2~3人なら50万円が上限となっています。
助成額の計算方法
助成額の計算方法は、生産性(企業の決算書類から算出した労働者1人あたりの付加価値)向上のためにかかった費用に助成率をかけて計算します。助成率は事業所内最低賃金によって、「870円未満」「870円以上920円未満」「920円以上」の3パターンがあり、例えば、870円未満の場合の助成率は90%です。費用に助成率をかけた額と上限額を比較して、安い方がもらえる補助金です。
業務改善助成金<特例コース>の場合
業務改善助成金の<特例コース>とは、コロナ禍でダメージ(売上高が30%以上減少)を受けた中小企業事業者を支援するための制度です。 <通常コース>とおおむね同様ですが、違いは、助成対象となる経費の範囲が拡大されて、業務改善計画に関連する経費も助成対象になる点や、賃金引き上げ額は30円以上のみでコース区分がない点です。助成率は一律「3/4(事業場内最低賃金額920円未満の場合は4/5)」です。
※参照......厚生労働省のHP
業務改善助成金の対象である要件をクリアしているなら、社員の賃金アップと生産性の向上を目指して、利用しない手はないでしょう。