ITインフラの基本は「19インチラック」。
しかし今、Google社やMeta社(旧Facebook社)といった世界的な巨大IT企業が運営する「ハイパースケールデータセンター」では、その19インチの常識とは全く異なるラックが現れました。
それが「OCP(Open Compute Project)」です。今回は、データセンターの運用を劇的に変えるこの新しい仕組みについて解説します。
Meta社が始めた「設計図の公開」プロジェクト
OCPとは、2011年にMeta社(発足当時はFacebook社)が中心となって発足したプロジェクトです。 従来、サーバやラックの設計はメーカーごとの企業秘密でした。
しかしOCPは、「ハードウェアの設計図をオープン(無料公開)にして、みんなで改良し合おう」「徹底的な効率化とコスト削減を目指そう」と、世界中のエンジニアの知恵が集まり、無駄を削ぎ落とした「データセンターのための理想の形」が作られました。

OCPでは、ラック(Open Rack)はV1からV3の仕様が公開されており、最新は「ORV3ラック」です。(2025年6月時点)
搭載されるOCP準拠のIT機器の幅サイズが21インチ(約533mm)を基本としていることから、「21インチラック」とも呼ばれます。
これは従来のデータセンターで主流である19インチラックと比べて、より効率的な冷却や高密度な機器の搭載を可能にするOCP独自の設計思想に基づいています。

ドライバーはもう要らない? 「スロットイン方式」
従来の19インチラックとOCPラックの最大の違いは、機器の取り付け方です。
従来の19インチラック
重いサーバを取り付けるためには、まずラック側に「専用レール」を位置合わせして固定し、そこにサーバをセットしてスライドさせ、最後に前面をネジ止めするという煩雑な作業が必要でした。
OCPラック
サーバを棚に差し込むだけの「スロットイン方式」を採用しています。ネジを一切使わないため、取り付けにかかる時間は数分の一に短縮されます。何千台ものサーバを扱う巨大データセンターでは、この「作業時間の短縮」が莫大なコスト削減につながります。
後ろに回らなくていい!メンテナンスはすべて「前面」で
もう一つの大きな特徴は、「すべての作業が正面(前面)だけで完結する」ようにデザインされている点です。
従来のラックは、配線や電源の抜き差しのために、ラックの「裏側」に回る必要がありました。
しかしOCPラックは、配線も電源もすべて前面からアクセスできるように設計されています。 これにより狭いラックの裏側に潜り込んで作業する必要がなくなり、配線作業や故障時の交換対応などの作業効率が大幅に向上します。
エンジニアの負担を減らす、「人に優しい設計」とも言えます。

「世界標準」を「日本の地震」に耐えられるように
このように合理的なOCPラックですが、そのまま日本で使うには一つ大きな課題があります。それは「地震」です。
OCPは主に地震の少ない地域で発展した規格のため、そのままでは日本の激しい地震には耐えられない場合があります。
そこで重要になるのが、「世界標準のOCP規格」に「日本独自の耐震技術」を組み合わせることです。
例えば日東工業では、OCPの規格(Open Rack V3)に準拠しつつ、自社の試験設備(菊川ラボラトリ)で徹底的な耐震実験を行っています。
OCP ORV3ラック 個別受注対応の製品ニュースはこちら(日東工業)
OCP ORV3ラック 個別受注対応のお問い合わせはこちら
まとめ:効率と安全の両立へ
これからの大規模なインフラ構築には、こうした「世界のトレンド」と「日本の安心」をハイブリッドした視点が求められています。
19インチの制約を脱ぎ捨て、効率とメンテナンス性を極めたOCPラックは、世界標準の合理性と日本独自の信頼性が融合した次世代データセンターの新たなスタンダードになるかもしれません。
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