「19インチラック」と聞くと、どのラックにもサーバやネットワーク機器が問題なく取り付けられると思っていませんか?
実は、ラックを購入されたお客様の中で、「サーバが取り付けられない!」という致命的なトラブルが後を絶ちません。
この問題の最大の原因は、19インチラックの「マウントアングル(機器を固定する柱)」の仕様が2種類あるという事実が、あまり知られていないことにあります。
多くの方は、以下のような誤解を抱えたままラックを購入してしまっています。
誤解 1: 19インチラックはすべて「前後ケージナット仕様」になっている。
誤解 2: 「M5タップ仕様」と「ケージナット仕様」はどちらでも大丈夫。
誤解 3: サーバのレールキットは、M5タップ仕様の丸穴にも取り付けられるはずだ。
標準的なラック(多くの場合、M5タップ仕様)を購入し、いざサーバを取り付けようとした段階で、レールキットがマウントアングルの穴に合わないことが発覚します。
レールキットの多くは、ケージナット仕様の四角い穴(角穴)に引っ掛ける爪やピンで固定する構造になっているため、M5タップ仕様の丸穴では固定ができないのです。
その結果、「ラックは届いたのにサーバが固定できない」という事態になり、慌てて追加部品(交換用のマウントレールやマウントアングル)を購入したり、最悪の場合はラック本体を交換したりするという大きな手戻りやコストが発生しています。
本コラムではこのようなトラブルを未然に防ぐため、購入前に確実に仕様を見分けるためのチェックポイントを徹底解説します。
機器の搭載・取付方法
19インチラック(システムラック)は「箱」ですが、ただ闇雲に機器を詰め込めば良いわけではありません。 収納する機器の形状、重さ、メンテナンスの頻度によって適切な取り付け方法が変わります。 今回は現場で必ず使う「3つの取り付け方法」を、日東工業の製品例を交えて解説します。
1. 棚板・台板に「載せる」方法
(用途:ハブ、モデム、タワー型PC、計測器、重いバッテリーなど)
最もシンプルで分かりやすい方法です。家庭のカラーボックスと同じように、ラックの中に「棚」を作りその上に機器を置きます。 「19インチ規格の耳(取付金具)がついていない機器」や「非常に重たい機器」は、この方法で収納します。
固定式棚板(日東工業の品名記号:RD13)
軽い機器(ハブやルータなど)をポンと置くための棚です。

スライド式台板(日東工業の品名記号:RD16)
キーボードやマウスなど、使う時だけ引き出したい場合に便利です。

重量用台板(日東工業の品名記号:RD151)
重たいサーバやUPS(無停電電源装置)を載せるための頑丈な台板です。通常、L型レール(日東工業の品名記号:RD65)という補強レールとセットで使用し、下からガッチリ支えます。

★ここがポイント!
重いものを載せる時は、必ず「L型レール(日東工業の品名記号:RD65)」などで荷重を支える必要があります。前側のネジだけで重い機器を支えると、機器の背面側がたわんで、下の機器スペースに干渉したり、前面の固定部の破損の可能性もあります。
また、スリット付き台板の簡単取り付けタイプ(日東工業の品名記号:RD152-SR)、L型レールの簡単取り付けタイプ(日東工業の品名記号:RD65-R)もおすすめです。
従来品はねじ止めが必要ですが、簡単取り付けタイプはねじなしで使用可能。耐荷重は従来品と同様で60kg。施工時間の短縮になると同時に、現場でねじを落とす心配もなくなります。
2. レールキットで「スライド取付」する方法
(用途:サーバなど)
サーバのメンテナンス(点検・交換)を容易にするための方法です。 引き出しのレールのような機構(スライドレール)をラックに取り付け、そこにサーバを固定します。これにより、配線を繋いだままサーバを手前に引き出すことができます。
• 純正レールキット: 通常、サーバメーカーが純正オプションとして用意しています。
★ここがポイント!
レールを取り付けるには、ラックの前後の柱(マウントアングル)の距離(ピッチ)が重要です。日東工業のサーバラック(FSS/FSSTシリーズ)などは、このピッチを調整できるようになっています。
3. マウントアングルに「直付け」する方法
(用途:スイッチングハブ、パッチパネル、1Uサーバなど)
最も一般的な「19インチラックらしい」取り付け方です。 機器の前面にある「耳(フランジ)」を、ラックの柱(マウントアングル)に直接ネジ止めします。 ここで注意が必要なのが、「ネジ穴の種類」です。
① タップ穴(M5/M6)タイプ
ラックの柱に最初からネジ溝(M5やM6)が切ってあるタイプです。ドライバー1本で簡単に固定できます。
• 日東工業の代表機種: FSシリーズ(スタンダードタイプ)、ネットワークラック(FSA、FSNA)など。
② ケージナット(角穴)タイプ
ラックの柱に四角い穴が開いているタイプです。ここに「ケージナット(RD751)」という四角いナットをはめ込んでから、ネジ止めします。 サーバなど、メーカーによってネジのサイズ(M5/M6)が異なる場合でもナットを交換するだけで対応できるため、サーバラックで主流の方式です。
• 日東工業の代表機種: サーバラックFSS、FSST、AHシリーズなど。
★ここがポイント!
「このラック、ネジが入らない!」と慌てる前に、柱の穴が「丸いネジ穴」か「四角い穴(ケージナット用)」かを確認しましょう。
機器の搭載・取付方法のまとめ
• 規格外の機器や重い物 → 棚板・L型レールで支える
• メンテナンス頻度が高いサーバ → スライドレールで引き出す
• ネットワーク機器や軽量サーバ → マウントアングルにネジ固定(タップ or ケージナット)
お客様の機器がどのタイプかを確認し、最適な「固定方法」と「オプション(棚やナット)」をセットで提案できるようになりましょう!
なぜ「M5タップ仕様」と「ケージナット仕様」2種類あるの?
主に「ラックに入れる機器の用途」と「固定の仕方の違い」により違いがあります。
サーバ・ストレージ機器向け:前後ケージナット仕様
サーバは非常に重く、壊れたときやメンテナンスの際に頻繁にラックから引き出す(抜き差しする)必要があります。そのため、マウントアングルに専用のレールキット(スライド金具)を取り付けます。このレールキットは、様々なサーバラックに固定できるよう、互換性が高いケージナット用の角穴を使うことが前提となっています。
ネットワーク・制御機器向け:M5タップ仕様
ネットワーク機器などはサーバに比べて比較的軽く、一度設置したら頻繁に動かす必要が少ないです。取り付けの手間を最小限にするため、ネジ穴が最初から切ってあるM5タップ加工(丸穴)が便利です。
要点をざっくりまとめ

前後ケージナット仕様とM5タップ仕様の比較表

仕様の違い:ネジ穴の構造
前後ケージナット仕様M5タップ仕様の仕組み
下記は実際にサーバをレールキットで搭載した写真です。
写真内赤丸のところでレールのツメを角穴に引掛けます。


M5タップ仕様:丸穴に直接ネジ山(タップ)を切った構造

誤って購入した場合:M5タップ仕様の対処法(日東工業の場合)
こちらでは、誤ってM5タップ仕様を購入した場合、追加で購入が必要な部材の詳細と取り付け方法を説明します。
一番間違いが多い、FSラックの対処法です。(ご注意:FVなど他機種は手順が違うため別途ご確認ください)」
日東工業のシステムラックをM5タップ→前後ケージナット仕様にしたい場合



間違いを防ぐ!購入前の確認ポイントと対処法
購入前のチェック:カタログ・図面のどこを見るべきか
ここでは、日東工業の製品を例に挙げマウントアングルと前後ケージナットの判別方法を2種類記載します。
①日東工業では、ラックのそれぞれの機種にアイコンとして表示


下記の日東工業のカタログのリンクより、違いを見比べてみてください。https://dcs.gamedios.com/iportal/cv.doc=22345380000&pg=15&v=NTO00001&d=NTOD01
②図面中のマウントアングル詳細図を確認

日東工業の商品情報サイトN-TECでは図面のPDFが閲覧できますのでご覧ください。下記URLに飛び、品名記号の左にある図面ボタンをクリックしてください。https://ntec.nito.co.jp/content/ppreview.html?code=C686-C748-S2540

日東工業の代表機種
日東工業で扱っているラックについてマウントアングルと前後ケージナットの代表機種を列挙しますので参考にしてください。
●前後ケージナット仕様になっている主な機種
●M5タップ仕様になっている主な機種
・ FSシリーズ(FSS、FSST、FSG、FSV、FSH、FSNA、FSRCを除く)
・ FVシリーズ(FVS-E、FVSM-Eは前後ケージナット仕様)
本コラムのまとめと、最適なラック選定のための再確認
ラック選定の失敗は、「マウントアングル(ネジ穴)の仕様が2種類ある」ことを知らなかったことから始まります。このトラブルを避け、最適なラックをスムーズに導入するために、以下の3つのポイントを必ず確認してください。
POINT1. 用途の確認
サーバやストレージなど、レールキットを使って搭載する機器が一つでもある場合は、必ず前後ケージナット仕様を選んでください。レールキットはM5タップ仕様(丸穴)には搭載できません。
POINT2. 構造の違い
ケージナット仕様は角穴で汎用性と強度を重視、M5タップ仕様は丸穴でM5ネジによる簡便性を重視しています。
POINT3. カタログの確認
「EIA規格」「JIS規格」といった大枠の規格名だけでなく、カタログや図面の項目で、必ず「前後ケージナット」「M5タップ」どちらかを確認してください。
お問い合わせ先
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※本コラムは日東工業の技術資料・ご注意事項を基に構成しています。
実際の条件は、会社や注文時の契約内容、商品、地域によって異なる場合がありますので、必ず販売店や営業担当者にご確認ください。
