ガソリンスタンドは年々減少し続け、現在はピーク時の半分以下になっています。なぜでしょうか?その理由を解説します。
ガソリンスタンドの現状
資源エネルギー庁によると、ガソリンスタンド数は1994年がピークで6万軒を超えていましたが、2023年には2万7000軒余りとなり、30年間で半減しています。
ガソリンスタンド減少の理由
ガソリンスタンドが減少している理由には、ガソリンスタンドが過多であった時に競争が激化し、利益が減少したため淘汰されていったことに加えて、下記のような理由が挙げられます。
●後継者問題
一般社団法人全国石油協会の「石油製品販売業経営実態調査」によると、ガソリンスタンドの廃業理由として「後継者の不在」が5年ほど前の時点で、すでに過半数近くを占めています。経営者の高齢化と後継者不足が理由で、廃業するところが多いことがわかります。
●法改正
ガソリンスタンドには、ガソリンを貯蔵するための地下タンクがあります。この地下タンクの腐食劣化による流出事故を防ぐために、2010年に消防法が改定されました。これにより、耐用年数(40年)を超えた地下タンクは改修するか交換する義務が強化されました。
地下タンクを改修するにしても交換するにしても高額な費用がかかるため、40年の耐用年数を迎えるのを機に廃業するところも少なくないようです。
●燃費の向上
過去数十年間で、車の燃費性能は飛躍的に向上しています。ガソリンが高騰するなか、軽自動車やハイブリッド車、EVなど、燃費のよい車に乗り換える人が増えました。それに伴い、個々の車が消費するガソリンの量が大幅に減り、ガソリン販売量が減少したことも、ガソリンスタンドの数が減少した大きな原因となっています。
ガソリンスタンドの今後
資源エネルギー庁では、ガソリンスタンドの数が3ヵ所以下の市町村を「SS(サービスステーション)過疎地」と定義し、2024年のデータでは、372市町村が該当していました。SS過疎地に住む人々にとって、今あるガソリンスタンドもなくなってしまうと、ガソリンや灯油の入手がさらに困難になってしまいます。
こうした厳しい状況のなか、既存のガソリンスタンドを維持していくために、次のような方策が行われています。
●事業承継の活用
後継者問題を抱えるガソリンスタンドは、外部から適任者を探す必要があります。そこで、M&Aなどによる事業承継が活用されています。
●公設民営のガソリンスタンド
長野県の売木村では、SS過疎地対策検討支援事業の補助金を得て、公設民営のガソリンスタンドが建設されました。コストダウンのため、タンクが地下ではなく地上に設けられています。
●多角的経営
ガソリンスタンドは、給油だけでなく、洗車や修理、暖房用の灯油の販売なども行なっています。そのため、今後さらにガソリンの需要が減っても、ガソリンスタンドの需要が完全になくなるわけではありません。
ガソリンスタンドが今後も存続していくためには、コンビニやカフェ、コインランドリーを併設するなど、多様なサービスを提供する多角的な経営が有効であり、すでに実施しているところもあります。
さまざまな理由により減少傾向にあるガソリンスタンドですが、給油以外の多様なサービスの提供により存続は可能とされています。今後、社会全体がEVに移行していくことを見据えて、EV充電ステーションに転換するというのも、経営存続のための選択肢の一つになるでしょう。
ユーザーにとっては、次に購入する車をEVにするのも一つです。「EVはまだ早い」と思っている方もいるかもしれません。でも、ガソリンスタンドの減少を考えると、EVも選択肢の一つに入れてみてはどうでしょうか?