東日本大震災を機に従来のエネルギーシステムの脆さが浮き彫りになり、火力発電などに頼らない再生可能エネルギーの導入が広まりました。
そうした状況を経ていま、将来に向けた重要なエネルギーシステムとして注目されているのが「分散型エネルギーシステム」です。
分散型エネルギーシステムのメリット
〇送電ロスの削減
〇災害時の備え
〇環境負荷の軽減
分散型エネルギーとは?
分散型エネルギーとは、従来の電力会社による大規模集中型エネルギーに対して、比較的小規模な敷地で需要家(電気の利用者)が、各地に分散して所有するエネルギーの総称です。
エネルギー源は主に、①電気をつくる創エネ、②電気を貯める蓄エネ、③電気を効率良く使う省エネ・制御系、の3つに分類できます。
分散型エネルギーの利用形態
分散型エネルギーには、さまざまな形態があります。代表的な例としては、地域に存在する太陽光発電設備や風力発電設備といった再生可能エネルギー源や蓄電池、各家庭で保有するEV、コージェネレーションシステムによる廃熱利用、などがあります。
利用される形態も、地域の特性や需要の形態などに合わせてさまざまですが、主なものは次の3つです。
1.自産自消(地産地消)……分散型エネルギーの設置された施設内で利用
2.面的利用……分散型エネルギーの近接地で面的(一カ所のプラントでエネルギーを
製造し各建物に供給)に利用
3.遠隔地利用……FIT売電などによる系統ネットワークを通じて遠隔地で利用
分散型エネルギーシステムが注目される背景
分散型エネルギーへの関心の高まりは、太陽光発電コストの急激な低下、SDGsの観点から再生可能エネルギーを求める需要家の増加とその対応、自然災害に備えた電力供給システムの強靭化の必要性、などが背景にあります。
こうしたエネルギーシステムの変化に伴い、従来の大手電力会社による大規模集中型の電力システムから、分散して多様なエネルギーリソースを活用する新たな電力システムへと変化しつつあります。
需要家自らがエネルギー供給に参画することにより、エネルギー需給構造の柔軟化を実現できるという政策意図もあります。
分散型エネルギーシステムのメリット
〇送電ロスの削減
分散型エネルギーは消費地に近い発電装置から電力が供給されるため、一般的な集中型発電と違い、長距離の送電網が不要なため、送電ロスを大幅に減らせます。
〇災害時の備え
集中型発電では、災害時に送電線がダメージを受けた際、電力供給が滞るなど大規模な停電につながるリスクがあります。分散型エネルギーでは、蓄電池を非常用電源として利用することで、停電時においても電力を利用できるなど、災害に備えることができます。
〇環境負荷の軽減
分散型エネルギーでは、CO2を排出しない再生可能エネルギーや発電時に回収した廃熱などを有効に活用することが可能で、環境にかかる負荷を軽減できます。
分散型エネルギーシステムの活用例
電力を大量消費する大企業や大型商業施設などは、分散型エネルギーを利用することで、敷地内に設置した再生可能エネルギー発電により自産自消できます。例えば、再生可能エネルギーが太陽光の場合、優先制御システムによって太陽光が優先して給電され、太陽光が不足するときは電力会社、停電のときは蓄電池から、それぞれ給電されるかたちで活用されています。
今後のエネルギーシステムは、従来の集中型エネルギーから供給される一方向型ではなく、集中型エネルギーに加えて、分散型エネルギーも活用して需要家も自ら供給に参加する双方向型へ、と向かっていると言えるでしょう。