熱関連コラム

2025年2月13日

ベテラン保全担当者も悩ませる盤の湿気問題。その原因と対策(前編)

『また制御盤が止まった!』 そんな経験、ありませんか?
盤は工場の生産ラインやインフラ設備の心臓部として、安定稼働に欠かせない重要な役割を担っています。そんな大切な盤は外部環境の影響を受けやすく、特に湿気は電気回路や電子部品に様々な悪影響を及ぼし、誤動作・故障さらには火災といった深刻な事態を引き起こす可能性があります。

湿気と湿度

まずは湿気と湿度についてお話します。湿気と湿度は何が違うのでしょうか。実は、どちらも空気中の水蒸気に関係していますが、その状態が違います。湿気とは、空気中に含まれる水蒸気そのものを指します。一方、湿度は空気中に含まれる水蒸気の量を数値で表したもので、単位は%(パーセント)です。

例えば、湿度が高い状態とは、空気中にたくさんの水蒸気が含まれている状態を指します。湿度が高いと、盤内部に結露が発生しやすくなり、電気回路のショートや電子部品の故障を引き起こす可能性があります。

湿気は目に見えませんが、湿度を測ることで、空気中にどれだけの湿気が含まれているかを知ることができます。

湿気と結露

では、湿気と結露はどう違うのでしょうか?

湿気とは
目に見えない 空気中に含まれる水蒸気のこと
結露とは
目に見える 空気中の水蒸気が冷やされて水滴になったもの

湿気は空気中の水蒸気そのものを指すのに対し、結露は空気中の水蒸気が冷やされて水滴になった状態(空気の飽和水蒸気量を超えた状態)を指します。つまり、結露は湿気が原因で発生する現象の一つと言えます。

空気中の水分には、目に見えない水蒸気と、目に見える水滴があります。水蒸気を含んだ状態を湿気といい、水蒸気が冷えて水滴になったものが結露です。
結露は目に見えるので問題だと感じやすいですが、目に見えない湿気も材料を劣化させる原因になります。そのため、湿気にも注意が必要です。

結露はどのように発生するのか

では結露はどのように発生するのでしょうか。前述の通り、結露は、空気が冷却されることで、飽和水蒸気量を超えた水蒸気が水滴となる現象です。

これを詳しく説明すると
空気は、温度によって、含むことができる水蒸気の量が違います。暖かい空気は、スポンジのように、たくさんの水蒸気を含むことができます。しかし、冷たい空気は、スポンジが小さくなったように、少ししか水蒸気を含むことができません。そのため、暖かい空気が冷やされると、含みきれなくなった水蒸気が水になって出てきます。これが結露です。

わかりやすい結露の発生例としては
冷たい飲み物をグラスに注ぐと、グラスの周りの空気が冷やされ、空気中の水蒸気が水滴となってグラス表面につきます。
また、冬場に外気が冷えた窓ガラスの表面に水滴がつきます。
これが結露です。

無題1-3

結露と湿気が引き起こすトラブル

結露によって生じる水滴は電気を通しやすいため、電気機器の故障に繋がる可能性があります。例えば、配線を接続する端子台に結露した水が溜まると、ショート(短絡)や漏電が発生し、機器が誤作動したり、故障したりする危険性があります。即座に誤動作や故障の危険に繋がることがあります。

目に見えない湿気もまた、絶縁劣化や錆による腐食を、長い時間をかけて進行させてしまいます。

湿度が高い環境では、部品の内部や表面に結露が発生しやすくなり、短絡や腐食を引き起こします。また電子部品には水分を吸収してしまうものがあり、部品の特性が変化したり、膨張したりして故障や性能低下の原因になります。

電子機器の故障
電子機器の使用湿度上限は一般的に85%RHと言われています。
金属の錆の発生
錆は湿度60%RHを超えると発生しやすくなります。電線や端子、電子基板の導電部の腐食で接触不良が発生します。また、内部機器をさまざまな環境から保護しているキャビネットが錆びて劣化することにより本来の機能が維持できなくなります。
カビの発生
カビは湿度60%RHを超えると発生しやすくなります。電線や端子、電子基板の導電部の腐食で接触不良が発生します。
絶縁性能の低下
湿度の影響により内部機器や電気設備機器の絶縁抵抗値が下がり、機器の故障や漏電による感電の危険性があがります。

 

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まとめ

湿度・湿気・結露とは

前編では、湿度と湿気と結露の違いについて解説しました。 また、湿気や結露が電子機器の故障や金属の錆、カビの発生などを引き起こす可能性があることを説明しました。後編では、盤に焦点を当て、湿気や結露が盤にどのような影響を与えるのか、そして具体的な対策方法について解説していきます。