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ベテラン保全担当者も悩ませる盤の湿気問題。その原因と対策(中編)

作成者: 日東工業|2025年2月13日

「盤の湿度対策、一体どうすればいいの?」

前編では、湿気、結露、湿度といった、空気中の水分に関する基本的な知識と、それらが電気機器に与える影響について解説しました。 中編では、いよいよ「盤」に焦点を当て、どんな影響を与えるのかを詳しく解説していきます。

結露と湿気が盤に与える影響

結露と湿気は、盤にとって様々な悪影響を及ぼします。今回は、その影響について具体的に見ていきましょう。

腐食
湿気が多い環境では、盤内の金属部品が腐食しやすくなります。腐食が進むと、電気伝導性の低下や断線を引き起こす可能性があります。
絶縁劣化
湿気は、盤内の絶縁材料の劣化を促進します。絶縁劣化が進むと、漏電や絶縁破壊のリスクが高まります。
結露
盤内に結露が発生すると、水滴が端子台や機器の電源部に付着し、電気回路のショートや電子部品の故障を引き起こす可能性があります。
カビ・菌の繁殖
高湿度環境は、カビや菌の繁殖を促します。カビや菌は、絶縁劣化や接触不良の原因となります。

引用元:一般社団法人キャビネット工業会
技術資料CA-G09施工上の注意(トラブル・対応事例)

これらの影響は、盤の寿命を縮めたり、誤動作や故障を引き起こしたりする可能性があります。最悪の場合、火災に繋がることもあるため、注意が必要です。

もっと詳しく!絶縁劣化と腐食

湿気による悪影響として、前章で「絶縁劣化」と「腐食」のお話をしました。 この章では、その内容についてもう少し詳しく解説していきます。

絶縁劣化
絶縁材料は、電気を通さない性質を持つ材料のことで、電線やケーブルの被覆、電子部品の保護などに使用されます。湿気は、絶縁材料の分子構造に浸透し、材料の化学的性質を変化させることで絶縁性能を低下させます。

吸湿による劣化
絶縁材料が湿気を吸収すると、体積が膨張したり、強度が低下したりすることがあります。また、吸湿により絶縁抵抗が低下し、漏電や絶縁破壊のリスクが高まります。
加水分解
水分が絶縁材料と化学反応を起こし、材料を分解してしまうことがあります。加水分解により絶縁材料の強度や絶縁性能が低下し、最終的には材料が脆くなってしまいます。

錆による腐食
錆は、金属が空気中の酸素や水分と反応して酸化することで発生する腐食の一種です。湿気は、金属表面に水分を供給し、錆の発生を促進します。

電気化学的腐食
水分は電解質として働き、金属表面で電気化学的な反応を促進します。これにより、金属イオンが溶け出し、錆が発生します。
酸性雨の影響
酸性雨に含まれる酸性物質は、金属の腐食を加速させます。湿気は、酸性物質を金属表面に付着させやすくし、腐食を促進します。

 

<補足>湿気による劣化の特長

ここまで、湿気が絶縁材料や金属に与える影響について説明してきました。 湿気による劣化には、共通する特徴がいくつかあるので、補足として紹介しておきます。

時間依存性
絶縁劣化や錆による腐食は湿気に晒される時間が長くなるほど進行します。
不可逆性
湿気による劣化は、一度発生すると元に戻すことが難しい場合があります。
環境依存性
湿度のレベルだけでなく、温度や大気中の汚染物質なども劣化速度に影響を与えます。

 

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